ごあいさつ

私とスペイン語との付き合いは60年近くになります。大学で学んでから外務省に入り、メキシコ、アルゼンチンなど主にスペイン語圏に約30年滞在しました。2004年の退官後、かねてからの夢でもあり、またスペイン語の世界に日本のファンを増やしたいとの思いから、日本の古典文学のスペイン語訳に本格的に取り組むことにしました。
そして『方丈記』(2004)を皮切りに、『閑吟集』(2012)、『梁塵秘抄』(2013)、『芭蕉の紀行・日記篇』(2015)、『世間胸算用』(2016) および石川啄木の『ローマ字日記』(2018)、『悲しき玩具』(2019)をベネズエラ、アルゼンチン、スペイン等で出版しました。また、日本においては大盛堂書房より日本語・スペイン語音声CD付きの対訳版として『スペイン語で奏でる方丈記』(2015)、『スペイン語で詠う小倉百人一首』(2016)、『スペイン語で親しむ石川啄木 一握の砂』(2017) 、そして『スペイン語で旅するおくのほそ道(CDなし)』(2018) を刊行しました。
百人一首のスペイン語訳が出版されると、これを基に百人一首を2ヶ国語でピアノ曲に乗せて歌う世界でも初めての「百人一首コンサート」が実施されることとなり、2019年5月には百首達成記念コンサートが東京ウィメンズプラザ・ホールで行われました。
また、2020年2月には、サラマンカ(スペイン)のSigueme社から『歎異抄』(浄土真宗の開祖である親鸞聖人の語録とその解釈を示した古典)の日本語・スペイン語対訳版、および7月には大盛堂書房から『スペイン語で愛でる万葉集』がそれぞれ出版されました。
外国の方には、日本の心を知る近道は日本の古典に親しむことだと申し上げたく、また、現代の日本人にとっても、自国語の古典を異なる言語で読み、異なる文化のプリズムを通して、新たな視点で自らの文化を見直すというのも実に興味深い試みではないでしょうか。
2021年8月
伊藤 昌輝
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鴨長明 著
伊藤昌輝 訳

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