この度スペインのサラマンカ大学において「古典文学に見られる日本社会の変遷」というテーマで講義をすることとなり、3月4日に日本を出発しました。これまで奈良時代の『万葉集』、平安時代の『梁塵秘抄』、鎌倉時代の『方丈記』、『百人一首』および『歎異抄』、室町時代の『閑吟集』、江戸時代の『世間胸算用』、『芭蕉文集』および『おくのほそ道』、そして明治時代の石川啄木(『一握の砂』、『悲しき玩具』、『ローマ字日記』)をスペイン語に訳してきましたので、これらの作品を紹介しつつその時代背景や日本社会の変遷について考察しようというものでした。
3月4日マドリード着、4日間滞在してから、新幹線でサラマンカへ入りました。大学での短期集中講義は9日から12日までの4日間(各2時間半、4回)でした。しかしその頃、スペインでのコロナウイルスの感染者数は日ごとに倍増していて、学生たちも浮足立っており、結局、講義は3回行っただけで、最終回は中止となりました。その他に同大学およびマドリードのコンプルテンセ大学でも講演をする予定でしたが、教育機関が閉鎖されいずれも中止となりました。当初はサラマンカでの講義と講演を終え次第レンタカーで地方を廻る予定でしたが、すべてキャンセルしました。幸い14日のJAL・イベリア共同運航のマドリード・成田直行便に変更ができ、これで帰ってきました。3月17日現在のスペイン全土の感染者数累計は11,178人、死亡者数は491人に上ります。ちょうどギリギリのタイミングで帰国できた気がします。しかし肝心の仕事の方は達成感が湧かず、残念さが残ります。
もっとも、サラマンカ大学のフォンセカ大司教迎賓館に5泊させて頂いたこと、私の「歎異抄」スペイン語訳を出版して下さったSigueme社(在サラマンカ)のエドゥアルド・アユソ代表から昼食に招かれ、いろいろと話し合えたこと、またサラマンカ大学日西文化センターのホセ・アベル・フローレス所長とも昼食を共にしながら日本とスペインの文化交流について意見交換ができたのはとても有益でした。
さらに40年近く前にマドリードの大学寮で3食を共にしたパコ(弁護士)がバダホスから夫妻で駆けつけてくれ、「万が一飛行機が飛ばず、スペインに永く滞在しなければならなくなったら是非自分の家へ来るように」と誘ってくれたのも有難く、忘れ難いです。
なお余談ですが、街を歩きながら印象深かったのは人々が親切だということと、歩行者がいると必ず止まるというスペイン人の運転マナーの良さです。日本も大いに学ぶべきだと思いました。
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